原田 幸希 氏
フリースクール Apple Baum(アップルバウム)代表

病院の作業療法士からフリースクールの道へ挑戦した作業療法士、原田幸希さんにインタビューをしました。

フリースクール Apple Baum(アップルバウム)について教えてください

 小学生から18歳までの不登校の子ども、引きこもりの子どもたちが来て日中過ごしている場所です。はじめは、環境に慣れるために、本人たちが好きなことをまずやってもらっています。来る時間もそれぞれで、眠いながら頑張って来ている子もいます。慣れてからは、本人と話をし、一緒にプログラムを考えています。調理活動や体育などの集団活動の機会も作り参加を促したりしています。
 フリースクールは、学校に在籍しながら通うことができ、校長先生の判断により、フリースクールに来た日は出席扱いになります。
 実際に学校に訪問し、主任・担任の先生方と生活の状況や、今後の支援の方法など話し合ったりしています。
 塾が併設されているので、「勉強したい」「受験をしたい」と希望した時に学習の支援もできる事がここの強みかと思います。

作業療法の視点が活きると感じることはどんな時ですか

 個人を理解するという上でとても役に立っています。特性や個性(得意なこと)など全体像をとらえて、個性を伸ばし自信を持てるような、個人に合わせて挑戦・活躍する場を作ったり、場合によっては親御さんや学校とのやりとりをしたり、環境を整える大切さを感じています。

 「将来、不自由のない生活をさせてあげたい」「学校に行かせたい」などの親御さんの子どもへの想いに寄り添ったり、そのような心配する気持ちがその子のメンタルヘルスにどこまで影響をしているのかを考えたりしながらこれからどうしたらいいか一緒に考えていたりします。
 自分が周囲から認められていない、と自信が無くなっている子たちも多く、私のような第3者が存在そのものを肯定してあげることの大切さも感じています。

教育現場に作業療法士が入っていくうえでどのようなことを感じていますか?

 個人を捉える視点の違いから、話をする上では気を使っています。
 担任の先生がフリースクールに来てくれることもあるのですが、ここで行っていることの意味を伝えることが私にできる事だと思っています。
 今日も、パンケーキを作ったんですが、人付き合いが苦手でも誰かのために焼こうと一生懸命になる子がいたり、作ってくれた子に正直に「ありがとう」「おいしいよ」と気持ちが伝えられたり、集団活動の中でADLスキルだけでなく、個別に配慮したコミュニケーションスキルを養うことができます。
 発達障害グレーゾーン、不安障害などの特性について説明する役割もあると思っています。
わかりにくいがゆえに、支援学級などの個別支援の枠から漏れてしまったからこそ、学校での生きづらさを抱えている子どもたちも多いように感じます。

教育現場へ関心のあるOTに向けて

 医療でも福祉でもない場でありますが、力になれることはあると感じています。
 他分野の人たちと話すことで、その考えの違い自体が新鮮で学びになっています。
 子どもも直面している困りごとに対して、作業療法士の視点を用いてHow toを提案できる強みがあると思います。
 飛び出すには私も半年以上考えて勇気のいることでした。私は病院の経験年数で言うと決して多いとは言えませんが、作業療法士の視点と考えてきた積み重ねは必ず活きると思います。子どもたちが関わりの中で心を開き、変化がみられるのがとてもうれしいです。

【インタビュアー】
広報部 ウェブサイト管理運営部門担当
仲田 海人